水産用医薬品は,動物用医薬品のうち水産動物に使用される医薬品の通称である。養殖生産者が使用基準の範囲で水産用医薬品を使用する限り,獣医師の処方を必要としないが,抗菌剤とワクチンの購入には都道府県が発行する指導書が必要である。水産用抗菌剤は原則として分類群(目)ごとに承認され,使用基準に基づき適正使用が指導されている。歴史的には,ブリ類のレンサ球菌症治療薬であるマクロライド系抗菌剤(Mc)の使用が突出しているが,大分県では生産者へワクチンの普及に努めた結果,Mc使用額がワクチン普及前(1991~2000年)の年平均5.1億円から,普及後(2001~2014年)には年平均0.23億円まで減少した。しかし,2012年に出現したⅡ型レンサ球菌症の拡大により,Mc使用額は再び増加した。水産養殖におけるAMR対策は抗菌剤の適正使用が基本であるが,抗菌剤使用を減らすためには,細菌病流行の変化に対応したワクチン開発が重要である。