日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.53,No.10 (2025)

表題:
MALDI-TOF MSによる微生物の迅速同定
[4]シーケンスに頼らない種同定を目指して
〜酵母におけるMALDI-TOF MS迅速同定の現状と課題〜
著者:
遠藤力也(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.53,No.10,pp.333−340(2025)

本講座の前回は,「汚染真菌の質量分析による迅速同定の実現に向けた課題」と題して,真菌,特に糸状菌(カビ)のMALDI-TOF MSによる迅速同定手法(以下,MALDI法)について概説した(伴,2025)。これに続き今回は,「シーケンスに頼らない種同定を目指して 〜酵母におけるMALDI-TOF MS迅速同定の現状と課題〜」と題し,同じく真菌の一群である酵母について,MALDI法の現状と課題を考えた。まず,酵母と糸状菌の種同定方法の違いを解説したうえで,筆者がラボで実施している酵母のMALDI法のワークフローを紹介した。次に,酵母を対象としたMALDI法の現状と課題をまとめ,その課題に取り組むべく構築したMALDI-TOF MSレファレンスライブラリEMALiMBを紹介した。野外の樹液酵母の生態を解明する研究開発において,EMALiMBを実際に活用している事例を紹介し,レファレンスライブラリ構築の重要性を解説した。最後に,酵母を対象としたMALDI法の活用法をまとめ,“シーケンスフリー”の種同定実現に向けた今後の展望を紹介した。

Key words:
EMALiMB/Reference library(レファレンスライブラリ)/MALDI Biotyper/species identification(種同定)/Yeast ecology(酵母生態).