Antimicrobial resistance(AMR)を文字通り訳せば,特定の種類の抗菌薬や抗ウイルス薬等の抗微生物剤が効きにくくなること,または効かなくなることであり,日本語では薬剤耐性となる。ただ今,世の中を騒がしているAMRは薬剤耐性を得た細菌すなわち薬剤耐性菌の問題であり,今回の講座の題目であるウイルス感染症におけるAMR対策は,あまり注視されていない。ウイルス感染症においては抗ウイルス薬が効果を示す疾患もあり,それらの疾患では抗ウイルス薬耐性ウイルスが問題となる。ウイルスと細菌ではその増殖過程が全く異なるので,抗菌剤(抗生物質)は,ウイルス感染症には無効である。しかし,ウイルス感染時に抗菌剤(抗生物質)が投与されることはしばしばおこることであり,その場合は無用な抗菌剤(抗生物質)投与の影響がでてくる可能性がある。この講座では抗ウイルス薬に対する直接の耐性ウイルスの問題とウイルス感染時に投与される結果おこる薬剤耐性細菌の問題について考察した。