塵芥収集作業者は,日常の廃棄物処理システム維持のため,ウイルス残存可能性のある塵芥物による感染リスクに対して,十分な対策がなされないまま業務を継続しなければならなかった。我々は,ゴミ投入口および塵芥収集物のような形状が複雑な対象表面や,微細な粉塵の浮遊が予想される投入口底面から30 cm程度の高さの作業空間の曝露リスク低減を目指し,日用品または化粧品で使用実績がある化合物から3-Methyl-3-methoxybutanolを主剤とした塵芥車用自動噴霧器に用いるミスト液を開発した。本研究では,ASTM1052に準拠した方法により,ミスト液がA型インフルエンザウイルスおよびSARS-CoV-2に対して高い不活化活性を有することを実証した。さらに,ミスト液の浮遊・落下ウイルスに対する不活化効果を36 L空間モデル試験法で評価した。膜の流動性評価,蛍光物質を含む小胞の透過性の評価,電子顕微鏡観察によりミスト液のウイルス不活化機構を解析した結果,エンベロープ膜の破壊などの全体的・局所的な構造変化による不活化である可能性が示された。